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photo: wikimedia
米ニューメキシコ州タオスの町では「タオス・ハム(Taos Hum)」と呼ばれる不思議な現象が観測されています。途切れることのない、ブンブンうなるような低音が聞こえるというもので、外よりも室内の方がよく聞こえ、また、昼よりも夜の方がよく聞こえるということです。最初の報告があったのは1991年の春です。

タオスの人口は約4700人ですが、全員に聞こえるわけではなく、ある調査結果によるとおよそ住民の2%が体験しています。「聞こえる人」に言わせると、どこかでディーゼルエンジンがアイドリングしているような音、というのが説明として最も近いそうです。「もはや拷問の一種で、時々大声を上げたくなる」とまで追い詰められている人もいます。

録音されたタオス・ハム Youtube / Shamil 87
こうした現象はタオスだけではなく世界中で観測されています。ロンドンとサウサンプトン(イギリス、1940年代)、ブリストル(イギリス、1970年)、ラーグス(スコットランド、1980年代)、ココモ(米インディアナ州、1999年)、バンクーバー(カナダ、2003年以前)、ウッドランド(イギリス、2011年)、ウィンザー(カナダ、2011年)、カルガリー(カナダ、2008年)、ケリー州(アイルランド、2012年)、シアトル(米ワシントン州、2012年)、ウェリントン(ニュージーランド、2012年)、ピサ(イタリア、2013年)、グアダラハラ(メキシコ、2013年)、コリマ(メキシコ、2013年)。観測された場所を列挙すると以上のようになりますが、上で述べたような特徴がおおよそにおいて共通しています。

気になるのは原因ですが、調査に携わった研究者によると、集団ヒステリーや幻聴ではなくなんらかの現象が実際に起きているようだとのことです。ココモ・ハムでは産業機械が疑われましたし、近くのビルの空調設備が原因と突き止められたケースもありました。その他、高圧ガスパイプライン、電線、無線装置が音源ではないかと疑われたこともありましたが、機械や電気的な原因に帰着できるものはそれほど多くないと考えられています。

ハムは低周波電磁波から来るもので、そうした音にとりわけ敏感な人のみに聞こえるという説も有力です。「聞こえる」人を調べてみたら、通常の人よりも可聴域が広かったと確認できた例もありました。また、耳鳴りの一種ではないか、と指摘する医師もいましたが、「聞こえる」人の大部分は通常の聴覚を持ち、耳鳴りを患ってもいません。

環境に原因を求めることも行われました。脈動や微小地震と呼ばれる地質活動は、海の波によって引き起こされることもある、微弱で低周波の揺れに起因しています。ほかにも、潜水艦の通信装置といった軍の実験に原因を求めることを含めて、さまざまな仮説が立てられましたが、どれも確たる成果は上がっていません。多少荒唐無稽な話ですが、こうした場所は地殻が薄く、地底のマグマの動きが音として伝わってくるという説や、タオスの例では、近くに頂上がえぐれた火山があるのですが、そこには古代の宇宙船が激突して埋まっており、その稼働音が聞こえてくるのだという説まで出ています。

近年話題となっている不気味な終末音との関連はあるのかなど、興味深い切り口がほかにもあります。いずれにしても、この長年の謎は深まるばかりであり、解明にはまだしばらくの時間が掛かりそうです。


タオス・ハムの別例1 Youtube / cherishsweetmemories
鳥の声や虫の翅音に混じって、カラカラ、シャカシャカいう音が聞こえています。たしかにディーゼルエンジンに似ています。

タオス・ハムの別例2 Youtube / cherishsweetmemories
かなりクリアです。ただ、こういう虫の声かもしれないという疑念がほんの少し湧いてきます。日本のクツワムシはガチャガチャ鳴きますから。

タオス・ハムの別例3 Youtube / cherishsweetmemories
虫の声に圧倒されていますが、かすかに聞こえています。

タオス・ハムの別例4 Youtube / dugall1
スイスのチューリッヒで録音されたもの。重低音系です。40秒あたりから実際の音が始まります。

ニューメキシコ州タオス

wikipedia: The Hum
via: livescience