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アトラントケリス想像図
米ニュージャージー州のアマチュア化石ハンターグレゴリー・ハーペル (Gregory Harpel) が、同州モンマス郡のとある小川でサメの歯の化石を探していたところ、それとは比較にならないほど貴重な、別の種類の化石を発見しました。古代に生きた巨大なウミガメの骨です。ウミガメの前肢を構成する上腕骨、末端側の約半分が出てきました。川底に露出していたのを掘り出したものです。

ハーペルは最初そこまで正確には分かりませんでしたが、何かの化石だという知識はあったので、ニュージャージー州立博物館に持ち込みました。博物館では、それがウミガメの上腕骨、末端側であると分かりました。しかしより詳しく同定するには、他の標本の骨と比較してみる必要があります。
そこでペンシルバニア州フィラデルフィアのドレクセル大学自然科学博物館へと骨を持ち込み、そこの化石コレクションと比較検討してみることにしました。実はドレクセル大学には、やはり同じようなウミガメの上腕骨が収蔵されていました。ただしこちらは根元側です。新発見の化石には根元側が欠けていたので、2つを付き合わせてみようというのです。

「ぴったり合う可能性などは、万に一つもないと思っていました」とニュージャージー州立博物館の担当者は言います。

ところがぴったり合ったのです。

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165年ぶりに再会を果たした2つの化石
合わせてみた瞬間、2つの骨がもともとは1つだったことが分かりました。欠けていたパズルのピースが、互いにぴたりとはまったようなものです。合うのではないかと、冗談では言っていたそうですが……。古い方の骨は1849年に博物学者ルイス・アガシズ (Louis Agassiz) により、学名Atlantochelys mortoni (アトラントケリス・モルトニ) として記載されていました。

165年を隔てて、巨大なウミガメの折れた上腕骨がひとつにくっついたのです。おそらくは、165年前、川底に露出していた大きな化石を誰かが半分だけ発掘し、持ち去ったのでしょう。詳しい経緯は不明ですが、それがドレクセル大学に落ち着きました。そして今年、もとの川底に残されていた半分が発掘され、巡りめぐって、以前の片割れと再会を果たしたというわけです。

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アトラントケリス上腕骨の3次元復元図。サメの歯の跡が窺える
学者らは、岩などの表面に露出した化石はすぐに風化してしまうものとこれまでは思ってきましたが、165年も姿形を保ったまま川底にあったわけですから、既成概念が覆されたとして驚いているようです。そのほか、もうひとつ、カメ自体について分かったことがあります。

上腕骨が完全な形で復元されたので、巨大ウミガメの、より正確な姿を再現することができるようになりました。それによると、このウミガメは約7,000~7,500万年前の白亜紀の海に暮らし、全長は約3メートルでした。頭の先から尾の先までその長さとなると、世界最大級です。

同じく約7,500万年前の白亜紀に生息していたアーケロン (Archelon) は全長約4メートルと言われていますが、それに匹敵する大きさであったことは間違いないでしょう。現生種で最大のオサガメは全長2メートル程度です。オサガメは固い甲羅を持たないなど実に興味深く、また体内に発熱期間を持っているのではないかと言われています。こうした中に今回のアトラントケリスがどういう位置づけで入ってくるのか。165年を隔てた再会の物語もさることながら、アトラントケリスの生態等についてさらなる研究が進むことを願わずにはいられません。

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image: wikimedia アーケロン想像図
Leatherback sea turtle and fish
photo: Banco de Imagens Projeto Tamar 現生種最大のオサガメ

video: youtube / Drexel University 今回の顛末記動画
via: BBC
via: Nature World News