BD-122 Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
自動車、トラック、航空機、機関車といった全ての輸送機関同様、船舶にも耐用年数というものがあり、それが過ぎたものは、中身を取り出した後でスクラップにされます。こうした過程を船舶解体と言います。
BD-131 Workers, Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
第二次世界大戦後、造船の主流は先進国からアジア等の発展途上国へと移行しましたが、船舶解体もまた同様で、低賃金で働く何万人という労働者が、かつて海を我が物顔に濶歩していた巨大な船体に取り付き、分解していきます。

BD-118 Workers, Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
今日では、厳格な衛生基準や環境基準、そして高騰する保険料などの理由により、先進国では船舶解体が経済的に成り立たなくなっています。余った軍艦を解体するなど、分野が極めて限られているのです。

BD-111 Worker, Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
通常は、アスベスト、PCB、鉛を含んだ塗料といった有害物質を除去する費用がスクラップ材の価格よりも高いために、船舶解体業は、環境基準や労働災害を巡る訴訟がほとんど存在しない国で栄えることになりました。

BD-105 Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
バングラデシュのチッタゴン船舶解体場はそうした場所のひとつです。世界最大級のこの解体場では約20万人が働き、バングラデシュの鉄鋼生産量の約半分を担っています。

BD-112 Worker, Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
この解体場の歴史は1960年にまで遡ります。サイクロンの暴風によりギリシャ船籍のMDアルパイン号がチッタゴン近くの砂洲に乗り上げました。何度か船を離礁させようと試みましたがうまくいかず、5年後、スクラップにされることになりました。

BD-108 Ship Breaking Yard, Chittagong
photo: flickr / FO Travel
その作業には何年もかかったのですが、人々はそこに雇用の機会を見出し、ひとつの産業が生まれるに至ったのです。

BD-109 Ship Breaking Yard, Chittagong
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1990年代半ばまでに、バングラデシュは世界最大の解体トン数を誇る国になっていました。最盛期の2008年には、チッタゴンは世界最大の船舶解体場となり、40の施設が稼働していました。

BD-117 Worker, Ship Breaking Yard, Chittagong
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しかし、圧力団体の概算によると、平均して週あたり1名の作業員が命を落としているといった状態であったことから、また、組合を作ろうとする者はすぐに解雇され、児童就労の疑いも報告されていたことから、バングラデシュの最高裁がついに最低限の安全基準の遵守を義務化し、それを満たさない全ての活動を禁止しました。

Ship Breaking Yard, Sitalpur, Chittagong (8)
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結果として、失業者が生まれた上に、バングラデシュの船舶解体業そのものが立ち往生してしまいました。

Ship Breaking Yard, Sitalpur, Chittagong
photo: flickr / Ashraf Uz Zaman
「エコノミスト」紙の記事によると、「連鎖反応により、多くの産業に影響が波及した。世界銀行の試算によると、バングラデシュの船舶解体業には20万人以上が従事していた。結果的に多くが失業した。国内の鉄鋼の価格が急激に上昇した」ということです。

Ship Breaking Yard, Sitalpur, Chittagong (27)
photo: flickr / Ashraf Uz Zaman
利権者からの突き上げにより、バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は規制を緩め、船舶解体業は息を吹き返しました。依然として規模は大したものですが、それまでのように記録的といった数字にまで達するかどうかは分かりません。

Ship Breaking Yard, Sitalpur, Chittagong (9)
photo: flickr / Ashraf Uz Zaman
その一方で、衛生面や環境面に影響のある汚染物質の放出も続いています。作業員ばかりでなく、より多くの人々や野生生物にも害は及んでいます。有毒物質が周囲の環境へと広く散逸しているからです。

via: urban ghosts media