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photo: flickr / mauro sanna マル・ディ・ヴェントレ島とその海
昨日お伝えした地中海で売りに出されている島ですが、その後さらに調べを進めた結果、いろいろと情報が間違っていた部分、そして新たに分かった部分がありますので加筆訂正します。

まず島の名前ですが、"Mal di Ventre" (マル・ディ・ヴェントレ) すなわち「腹痛島」とお伝えしましたが、この島はサルデーニャの言葉で"Malu Entu"あるいは"Malu Ventu" (表記の揺れはあるものの、酷い風の意)と呼ばれているのだそうです。西方からミストラル (フランス南部から吹き下ろす、乾燥した北風) が吹き付けると昨日も書きましたが、島には一本も木が生えていないことからも、風の強さ、過酷さが窺い知れます。
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photo: flickr / mauro sanna
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photo: flickr / Nicola Saiu マル・ディ・ヴェントレ島の地上部。島に建つ灯台が遠くに見える。
ピエモンテ地方で海図が作られた際、その"Malu Ventu"が誤って"Mal Ventre"と解釈・記載され、世間に広まってしまったというわけです。本土で話されているいわゆるイタリア語とサルデーニャ語とではかなり異なる部分があるのです。そうした背景が分かって「悪風島」と読み直してみると、島のありさまとよく合っていますね。「腹痛島」はやはり不自然、しかもそんな名前の付いた島で水を飲んだらとんでもないことになりそうです。

島にはローマ時代の遺跡があり、井戸が残っています、と昨日は書きましたが、これ自体は間違っているとは言い切れない部分があります。しかし掲載した画像が間違っていました。あんなに立派な柱頭付きの柱は残っていません。タロスという都市があったとも書きましたが、都市はありません。そもそも島の全景の写真を見ると吹きさらしなのに、大理石の柱が建っているという記述を疑うべきでした。

島にはローマ時代かそれ以前の建物の礎石は残っているのですが、遺跡と呼べるほどはっきりしたものではないようです。フェニキア人やローマ人が来る前にサルデーニャ島全体で栄えていた、ヌラーゲ文明の塔状住居 (この塔をヌラーゲと呼びます) の痕跡の可能性が高いようです。井戸というのは、地下から水を汲み上げるというよりは、古の雨水貯めが残っていると考えた方が良さそうです。そこの水を飲んだらまず間違いなく「腹痛」 (マル・ディ・ヴェントレ) にかかることでしょう。

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photo: mailonline マル・ディ・ヴェントレ島全景。遺跡は見えない。
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photo: mailonline 島にあるとされた遺跡。実際は近くの半島にあるタロス遺跡の写真。
ではコリント式の柱が二本建っているあの画像はどこのものなのかというと、都市タロスで間違いないのですが、タロスがあったのはマル・ディ・ヴェントレ島ではありません。そこから数km離れたサルデーニャ本島のシニス岬にありました。マル・ディ・ヴェントレ島とシニス岬は同じ海洋保護区に属しているので、まとめて語られる内に2つが混同されたようです。そもそも、あのように美しい柱が残っているような島、2億円で買えるわけがありませんでした。20億円、200億円でもどうか……いや、値段など付けられない価値があるでしょう。

以上をまとめると、マル・ディ・ヴェントレは遺跡があるにしても礎石程度の、木が一本も生えないような強風吹きすさぶ島で、定住して暮らすには難しそうな環境でした。もっとも、これは陸上の話です。海洋保護区に指定されていることからも分かるように、海は素晴らしく透き通っており、ダイビングにうってつけです。砂浜も本物の水晶の粒から出来ていますし、海の美しさを楽しむための島と発想を逆転させれば、絶好の位置取りということになります。海への最前線基地と考えると2億円も高くはないのかも知れませんね。

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photo: wikimedia マル・ディ・ヴェントレ共和国の首都
蛇足ではありますが、この島は2008年にミクロネーションとして独立を宣言したことがあります。国名は「マル・ディ・ヴェントレ共和国」。サルデーニャ独立を目指す政治団体が勝手に上陸して小屋を建て、旗を掲げて住み着いていました。島はもともとサルデーニャ独立主義者党という政党の集会場所だったのだそうです。しかし2012年に不法占拠で有罪が確定し、計画はあえなく頓座しました。


A: マル・ディ・ヴェントレ島 B: タロス遺跡

wikipedia: ヌラーゲ
wikipedia: Republic of Mal di Ventre
via: The island of Mal di Ventre