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photo: flickr / Adrian Gutarra Sebas
アンデス山脈の尾根々々がアルゼンチンの大平原へと沈み込もうとする位置に、その穴はあります。直径約300mのクレーターが、南北方向に2つ、縁を接するように並んで口を開いています。近くのロス・モイェス村の住民はこのクレーターをこのように呼んでいます——亡魂の井戸、と。
これらのクレーターは、地質学的には、シンクホールとして説明が付きます。石膏からなる地層が地下水による浸食を受け、地表の下に大きな空洞が出来ていた、その天井部分が崩落したのです。奈落はそのまま水で満たされました。現在、2つの穴は幅の狭い崖状の斜面で隔てられているだけなので、将来的には一繋がりの穴となると予想されていますが、穴の内部が地下で連結しているのかどうかは分かっていません。

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photo: flickr / Damian Arrighi 南北両クレーターのパノラマ写真
南側のクレーターは、大きさのみを言うならば300m以上ありますが、景観的にはそれほど特異な印象は受けません。縁の斜面は比較的緩やかで、植物が根を下ろすことができ、浸食作用も一応は止まっています。中央の湖は時として水位を変え、形も変わると言われています。

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photo: wikimedia 南側クレーター
北側のクレーターは縁が切り立った崖となっており、未だに崩落が続いています。滑りやすい砂が降り積もった斜面は見るからに危険です。穴の直径は約300m、しかし少しずつ広がっていると言われています。こちらは1981年に計測が行われ、その結果、中央の湖の深さは約21mであることが分かっています。崖の高さは80mですから、構造全体の高さは約100mということになります。

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photo: flickr / fabio 北側クレーター
これら2つの穴から7~8km離れたロス・モイェス村には、古来より一つの話が伝わっています。その昔、アンデス山脈を挟んで両側の先住民が戦争をしていました。ある時、ロス・モイェスの戦士数人が村に退却して来る際に、西側の人々により追っ手が放たれるという事件がありました。村の近くまでたどり着いたところで夜になりましたが、気がつくと追っ手の姿が消えていました。そこで戦士は銘々の家に帰りました。しかしその夜は一晩中、うめきとも嘆きともつかない声が闇の向こうから人々の耳に届いていました。

翌朝、不審に思い敵の姿が消えた辺りまで引き返した戦士らは、その場に巨大な井戸のような穴が出来ているのを見つけて大いに驚きました。ロス・モイェスの戦士を追ってきた敵の足元で大地が陥没し、追っ手の一団が今まさに飲み込まれようとしていたのです。湧き上がってきた水に溺れ行く敵戦士が、なんとも言えない悲しげな声を発しています。それこそが昨夜のうめき声の正体でした。それ以来、穴は苦しみ嘆く敵戦士の霊魂にちなみ、「亡魂の井戸」と呼ばれるようになりました。今でも時々、風の強い日には、亡霊の声が風に乗って穴の方角から聞こえてくるということです。村人は折を見ては穴を訪れ、荒地をさまよう戦士の霊魂のために祈りを捧げるのです。

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photo: flickr / Luis Adrian Crescentino
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photo: flickr / XYZ+T
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photo: flickr / Greta Mininni
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photo: flickr / Sergio Avelino Campagnolo










via: Amusing Planet
via: Gatis Pavils, Wondermondo