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photo: jobsdairy.co.uk
ロンドン郊外ハンワースにあるデイリークレスト社の社屋。その屋上には、ガラス繊維製の雌牛の群が、40年近くも並んで立っていました。ところが最近、その雌牛の群が忽然と姿を消してしまったのです。地元住民はがっかりしています。名物となっていた雌牛の群を社屋屋上に戻すよう、7,000人以上が嘆願書に署名しました。
ハンワースから約5キロ離れたイーストトゥイキナムに住む、IT企業の重役ヨアキム・ジェリネクは、2歳の息子を乗せて幹線道路A316を走っている時に雌牛が消えていることに気付きました。問題の社屋はA316が地元の道と立体交差しながら、緩やかに湾曲している部分に沿って建っています。

帰宅したジェリネクはデイリークレストに電話し、雌牛の消息について訊ねました。すると、雌牛は健康上と安全上の理由から撤去されたもので、新しいものに置き換える計画はないことを知らされました。

その回答に満足しなかったジェリネクは、オンラインの署名サイトを立ち上げて「他にも同じように感じている人がいるかどうか」見てみることにしました。すると2日の内に、いろいろな反応が返ってきました。6,000人の署名に加えて、ジェリネクと同じように雌牛を貴重なものと感じていた人々から多くのコメントが寄せられたのです。

「あれはまさに地元遺産ですよ。うちの上司はアメリカ人なのですが、雌牛がないと道に迷って家に帰れないそうです」と、ある支援者は書いています。また、子供時代の思い出について語る人もいました——「私の祖母は20年以上に渡ってジョブスで働いていました……祖母の家の行き帰りには、いつも『お祖母ちゃんの雌牛』に向かって挨拶していました」。ジョブスというのは社屋がデイリークレストの所有になる前の、1970年代まで続いた旧社名です。

運輸省の統計を利用したジェリネクの試算によると、A316沿いの雌牛の前を毎日7万台の車が通過し、年間では2,550万台に達します。多くはロンドンへと向かう人か、トゥイキナムへラグビーの試合を見に行く人で、イギリス人に加えて外国人もかなりいるものと思われます。

また雌牛については、どこかに保存されているのか処分されてしまったのか、ジェリネクは把握していませんが、実物大よりは小さかった5頭分の像を新造するとしたら、おおよそ175万円 (1万ポンド) は掛かるものと見積もっています。

デイリークレストの広報担当者は、地元の評議員やジェリネクら保存を呼び掛けている人々と話し合い、何らかの決定が下されるまで協議を続けると述べています。それまでジェリネクは、人々に関心を持って貰えるよう訴えを継続する方針でいます。

「ピンクフロイドの豚と同列に語る人も中にはいるんですよ。立体交差を登っていくと地平線から現れてくるんです。少しシュールな光景ですが、あのあたりの道では他に見るべきものもないのです」とジェリネクは語ります。

「私が見てみたいと思っているのは、草を植えた屋根の上を歩き回る雌牛で、天気予報が雨だったら座るとか……そんなに難しいことは言いません。でも本当は、元通りになるだけで良いのです。」

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photo: jobsdairy.co.uk 旧本社。建物の前の芝生に雌牛の姿が見える。
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photo: jobsdairy.co.uk 左側に旧本社見え、建物前の芝生にたくさんの雌牛 (の置物) がいる。
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photo: jobsdairy.co.uk 1977年完成当時の社屋増築部分。屋根の上に雌牛がいる。
旧ジョブス乳業ホームページQ&Aより

問 最初は全頭地面にいて、次に屋根の上に移された雌牛ですが、誰が作成に関わったのでしょうか。——ブレンダ

答1 こんにちは、ブレンダ。初代の雌牛はコンクリート製で、社屋の真ん前の花壇があったのですが、そこに専用の牧場を四角くしつらえて置かれました。1935年頃のことです。営繕部に勤めていて、運輸部のレイ・バッデンの義理の父でもあった、ジョージ・テイラーが作ったと記憶しています。

残念ながらその後、長年に渡り風雨にさらされたことで傷みが進み、耳や鼻や尾が取れてしまう事態となりました。1977年に社屋の増築が完了した際、もはやこれ以上の使用には耐えられないという決定が下されました。しかしその当時、ジョブスの雌牛はあまりにも有名になっており、そのまま何もしないわけにはいかないという気運が高まりました。車両修理部の社員が中心となり、ガラス繊維で新しい雌牛を作ったのです。写真で屋上に立っている雌牛がそれです。——旧ジョブス乳業サイト編集人

答2 こんにちは、ブレンダ。今しがたジョブスのウェブサイトを見つけたところです。あなたの質問を読みました。私は1976年に車両修理部の見習いとしてジョブスに入社しました。ミック・ピアースの下に付き、ガラス繊維製の雌牛の作成に関わりました。型がそれ専用に一つだけ作ったものだったので、雌牛を組み上げたところどれも同じ形になってしまいました。そこでいくつか、頭の角度を変えて取り付けたのを覚えています。頭を下向きにしたので、建物の縁越しに地面を見降ろしているような一頭がいたように思います。また左右の胴体や頭の間にガラス繊維の帯を挟み込み、よりずんぐりとした身体つきにして、雄牛を一頭作りました (他にも手を加えましたが、それは省きます)。私が型を使って作業しているところをスーザン・ロバーツが撮影してくれた写真があって、それが載ったジョブスの本がどこかにあるはずなのです。ちょっと探してみます。

この情報がお役に立てば嬉しいのですが。——ボブ・ブルックマン









via: telegraph
via: Job's Dairy website