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ある晩のことですが、妻が仕事で出ていたので、台所の流し台で皿を洗っていました。ちょうど流し台の上が台所の窓になっているのですが、そこでバンと音がして飛び上がるほど驚きました。目を上げると、ボールを持った少女が外に立ってこちらを見ていました。一〇歳か一一歳か、せいぜいそれぐらいでしょう。
「こんばんは」と少女が言いました。

「やぁ」と答えはしたものの、動悸が収まっていませんでした。

「男の子がいたわよね」と少女が訊ねて来ます。

怖さのさめやらぬまま、その通り、息子がいると返事をしました。

「外に出てきて、遊べるかしら」少女が訊きます。

「まだちょっと早すぎるね」私は説明しました。「ようやく一歳になったところなんだ。それにいまは眠っている」

少女はにっこりしました。「わかったわ。じゃあほんのちょっとだけ早かったのね。パパが言ってたんだけど、男の子が二歳になる頃には、外に出て私たちとずっと一緒に遊べるようになるんですって。また来るね」

少女はきびすを返すと、スキップをしながらどこかに行ってしまいました。私は怖くてたまらず、流し台の前にへたりこみました。時刻は午後一〇時、寒く、雲のかかった冬の夜で、月は出ていませんでしたが、少女の姿は克明に見えていました。窓の外にはちょっとした林が広がっているだけで、子どもが遊べるような開けた場所などそこにはありません。私が住んでいるのは集合住宅の三階です。

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Mcourd作・雪森深一郎訳