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リュボフ・オルロヴァ号(Lyubov Orlova)。
1976年旧ユーゴスラビアにて建造された客船。南極や北極への観光航海に特化しており、氷の海での航行が可能なように船体が強化されている。
2010年、運行会社の負債によりカナダのニューファンドランドで差し押さえを受け、以後2年間セントジョン港に係留されたままとなる。2012年、売却され解体のためドミニカ共和国へと曳航される。
出港の翌日、曳航索が切れる。海上はうねりが3メートルありタグボートでの再曳航は困難を極めたため、漂流に任されることとなる。しかし石油・天然ガスの採掘基地に害を及ぼす危険があったためにカナダ運輸省が動き、領海外への曳航に成功した。
カナダ運輸省はここで決断を下し、船がカナダの資産や環境に悪影響を及ぼす危険はなくなった上に、航行を続けるには安全上の問題もあるとして再度曳航索を切断、意図的に漂流させた。船の管理責任はあくまでも船主にあるとカナダ運輸省は主張した。しかし船主側では既にリュボフ・オルロヴァ号を失ったものとして損害に計上していた。

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風と海流によりリュボフ・オルロヴァ号は北東方向に流された。再漂流を開始した2013年2月4日時点でニューファンドランドのセントジョン港から250海里(463km)東方の海上にあった。その後はノルウェーから西アフリカまで非常に広い範囲のどこかへと流れていく可能性があった。魔のサルガッソー海に迷い込んでもおかしくはなかった。しかしレーダーによる観測や船からの電波を捉えた結果から推測すると、大西洋を約1年かけて横断、イギリスに向けて漂流を続けており、2014年1月、そう遠くない将来どこかの浜に漂着するとの予測も出るようになった。

船には大量のネズミが湧いており、共食いを繰り返しているという。そのような船がイギリスのどこかの浜に乗り上げたらどうなるか。逃げ出したネズミから怖ろしい伝染病があっという間に広がらないとも限らない。残存燃料により海浜が汚染されるかもしれないし、頑丈に作られた船なので解体費用が多大にかかるかもしれない。イギリスの沿岸警備界隈は戦々恐々といった様相を呈している。

「リュボフ・オルロヴァ」という船名は旧ソ連の女優に由来している。リュボフ・オルロヴァはロシア貴族の家に生まれたが革命後は家族を養うために働いた。 女優としてスターリンに賞揚されることでチャンスをつかみ、数多くの映画に主演した。舞台女優としても歌手としても優れていた。船が進水したのは1975 年に彼女が亡くなった翌年だった。
女優の名を負うにふさわしい、昔ながらの客船らしい、優美な形をした船が悲劇的な最期を迎えようとしている。

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wikipedia: Lyubov Orlova(女優、英語)
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