巨大なチェス盤に岩山や樹木をまばらに配置したような、不思議な世界。そこに棲む謎めいた人々、謎めいた動物。あるいは未知の惑星の表面でしょうか。どうもそれらの生物の間には、複雑な生態系が出来上がっているようなのです。フランスのリヨンにあるアート専門学校で、卒業制作として生み出された作品です。
ヒヒのような肉食動物、グライダーを背負って飛ぶ人、スカートを服のように着る女性、少年 (のような少女)、フリスビーを投げる人。これらがチェスのどの駒に相当するのか、といったことは考えても仕方がないでしょうが、チェスというゲームがひとつの生態系であるならば、逆に、市松模様の異世界に成立しているひとつの生態系をチェスと呼んでも差し支えはないのではないか、そのような思索に浸らせてくれる作品です。もっとも、ただ見ていても非常に面白い。背後に働いているルールは分からないながら、非常なる緊張関係は見て取ることができて、手に汗握るサスペンスが展開すると言っても過言ではありません。
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